文系博士大学院生の苦悩〜院進・D進のメリット・デメリット

私は文系博士後期課程の大学院生です。

インスタグラムやyoutubeで、大学院生の勉強アカウントとして発信をしていますが、そこでよく博士進学についての相談を受けます。

特に「博士課程進学のメリット・デメリットを知りたい」という声が多いので、今回記事にしてみました。

この記事はこんな人におすすめ
  • 博士課程に興味がある
  • 大学院に興味がある
  • 実際の博士課程の大学院生のリアルを知りたい
目次

メリットはほぼ無い


正直文系の博士後期課程進学はメリットよりもデメリットの方が目につきます

文系と言っても、かなり範囲が広いので、どの大学にも絶対にある分野、例えば英文、法律、経済、国文などであればまだ状況は少し違うかもしれません。(ちなみに私は哲学が専門です)

今のところ唯一考えられるメリットは、「好きなことをできる」こと…かな

では、なぜこんなにもメリットが浮かばないのか、という理由は以下のデメリットを見てもらえればわかると思います。

デメリット

就職難である

まず文系の博士後期課程に進むということは、基本的に教授職を狙っていくことになります。

いわゆる研究者ですね。

(とはいえ、これは文系と言っても分野によって違いがあるかもしれません。あくまで哲学科にいる私の感じている感覚と、他の学部の博士院生に聞いた話に基づいているので全く正解というものでもないことは、ご了承ください。)

研究者と言っても、文系だと企業の研究室への就職という道はないので、基本的には大学の常勤である「教授」や「助教」を目指すことになります。

ちなみに、これは私も学部の時は知らなかったのですが、「非常勤講師」や「兼任講師」など「講師」と言われる人は基本的に「アルバイト」と同じで、もちろん博士を持っている人もいますが、コマごとにお給料をもらうって感じです。(これも大学にもよるけれど)

しかし、現在の大学のシステムは多くの講師と、少数の教授によって成り立っています。

なので、ポストの競争はとても激しいです。

それに加え、せっかく募集があったとしても、同じ分野でも専門とズレていたりすることもあります。

(例えば哲学でも、倫理学なのか、西洋哲学なのか、中国哲学なのか、など)

つまり、就職として目指される教授のポストは、競争率が激しく、しかも専門も合わない可能性もある。

近い専門のポストが空くこと自体も、もはや結構運ですし、しかも競争も激しい。

さらに少子化で大学自体成り立たなくなっていっている、という状況もあります。

また、修士だけとってすぐに就職ならまだいいのですが、博士課程をでたところで、これまで全く社会経験のないいい年の大人が新卒たちと働きつつ、企業は院卒には少し高いお給料を払わなきゃいけなかったりと、博士を出てからの就職にも色々問題はあります。これが高学歴ワーキングプアというやつです。

文系でも、どの大学にもある学部や専門(法律とか経済とか教育学・英文・国文とか)なら、私が感じているよりはポストもまだマシかもしれません。哲学は、想像の通り、哲学科がある大学自体も少ないので、常勤のポストは本当に限られています

周りとのギャップ

大学院に入り修士課程(マスター)を経て、博士課程後期にもなると、ほぼアラサーです。

周りは仕事も落ち着き始め、結婚したり、子供ができたり….

一方、博士の大学院生はお金もないし、バイトして、授業うけて、研究して…と、ほぼ大学生の時と同じような生活を送っています。

周りとのギャップで何故か無駄に焦ったり、このまま結婚もできないのでは…?

将来も常勤につけるかわからないし…という不安は常にあります。

お金の問題


大学によっては、院生でもTAや助手などで、お給料をもらえることもあります。

とは言えこれも基本的にはバイトなので、普通に働いているようにはお金はもらえません。

さらに学費もかかります。もちろん生活費に書籍代に…

これも大学によりますが、うちの大学では学部よりも修士の方が、修士より博士課程のほうが学費は安いですが、それでも何年もかかるわけですから、結構な額になります。

ここで奨学金でなんとかしていったとしても、お先は就職難だし、返せるかどうかも定かではありません。

奨学金という名の借金を背負いつつ、真っ暗な道を歩き続ける感じです。

でもバイトを増やせば、研究が進まないし、研究が進まなければ論文が書けずに在籍年数は増えるし…という葛藤ですね

ちなみに周りの院生や今までの先生たちは、塾講師や予備校講師をしている方が多い印象です。

博論は想像よりも大変

博論は卒論・修論の延長では考えられないほど、巨大なものです。

これも大学にもよるのですが、うちの大学では博論を書くためにまず全国的な学会誌に審査論文を通す必要があります

これが大変です。

つまり、学会で発表し、学会の厳しい審査を受かり論文がアクセプトされなければ、そもそも博論を書く土俵に立てないのです。

もちろん、その審査論文たちが博論のベースにはなるのですが

また博論の審査自体も大掛かりで、外部の先生にも審査をしてもらったり、口頭の発表会があったりと、なかなかハードな部分もあります。

それでも博士課程に進んだ理由


ここまでみると、博士大学院生には本当にデメリットというか苦悩が多いことはお分かりいただけたと思います。

なので博士に進むか迷っている人は、お金や就職、まわりとのギャップも全然気にならないぜ!って思えるかどうかを一度考えてみるといいかと思います。(ご自身が進みたい分野によっても就職状況など様々変わってくると思うので、あくまで参考までに)

ちなみに私は、そういうデメリットも全部気にしない!とにかく研究がしたいと思ったので、大変なのを覚悟でこの道に進みました。

しかし、そのくらいの強い覚悟をしたうえでさえ、以上のような苦悩がチラつくこともあります。

それでも毎日好きなことをできているのは、本当に幸せだと私は感じます。


instagramやyoutubeで大学院生の日常を公開しているので、大学院に興味がある方や、勉強をさらに頑張りたいなと思う方は是非遊びにきてください💛


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コメント

コメント一覧 (3件)

  • 現在、東大受験生の10代です。えまれさんは哲学の中で誰を、或いは、誰を専門的に研究しているのですか。私も大学で哲学を専攻しようと思っているので大学進学前に書いておきたいです。

    • コメントありがとうございます!研究している哲学者は公開してません、、すみません。ざっくりになってしまうのですが、現代の西洋哲学を研究しています。受験頑張ってください(*^^*)

  • 返信ありがとうございます。えまれさんはずっと日本の大学で研究してきたんですか?まだ受験生の身で大変恐縮ですが、私は学部は日本、博士・修士は欧米で取るつもりで、日本の大学院が欧米の大学院に勝っている所ってあるんですか?給料や待遇の面でも欧米の方がかなり優遇されていると様々な博士号取得者が仰られていたので。

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